前置き(ペトロの手紙一
新約聖書正典の中にペトロの名によって書かれた手紙が二通ありますが、この二通の手紙は使徒ペトロ自身によって書かれたものではなく、ペトロの名によって書かれた「使徒名書簡」とされています。
しかもその内容は、きわめてパウロ的な信仰だということです。
この第一の手紙を読んでみると、やはりパウロの影響が色濃く残っていると思います。
そのようなパウロ的な書簡というかパウロの信仰を受け継いだと思える書簡が、ペトロの名を用いてパウロ系の諸集会に宛てて書かれているのです。
この手紙の差出人は、「イエス・キリストの使徒ペトロ」となっています。
作成された経緯は5章12節で、「わたしは、忠実な兄弟と認めているシルワノによって、あなたがたにこのように短く手紙を書き、勧告をし、これこそ神のまことの恵みであることを証ししました。この恵みにしっかり踏みとどまりなさい。」と言っています。
解説によると、この手紙の著者がペトロ自身ではなく、すでに確立していたペトロの権威を用いてペトロ以後の人物が書いたもの、すなわち「使徒名書簡」の一つであるとされています。
理由は、この手紙の背景が70年のエルサレム陥落以後の状況であり、ペトロは60年代前半に殉教しているので、ペトロの筆であるとするのは困難だと言うことです。
また、この手紙のギリシア語は、高度に洗練された文学的なギリシア語であるから、ガリラヤの漁師であったアラム語を母語とするペトロが書いたとはとても思えないと言うことです。
ただ、5章12節で「シルワノ(シラス)によって」と書いていますから、ペトロの秘書としてシルワノが書いたとする説もあります。
調べてみますと、シルワノと言う呼び方はラテン語形で、シラスがアラム語形の呼び方であると言うことです。
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