イサクのゲラル滞在(創世記26章)
聖書の箇所は、26章1節から14節です。
ここはかつて主がアブラハムに「しかし、わたし来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」(17章21節)とありますから、それを受けての話で、アブラハムが死んだ今、契約はイサクへと引き継がれたということでしょう。
ここはアブラハム亡き後のイサクの生き方を記録しています。
子どもの誕生(25章)とやがて老年になって子どもを祝福する27章との間に、イサクという人物がどのように主によって祝福されたか、またどんな生き方をしてきたかを知ることができます。
なお、主が祝福するときには決まってピエル態(能動態で強い意味を表す)が用いられいることに注意したいと思います。(3節、12節24節)
それは、主が祝福の神であり、与えることを最も喜びとするからでしょう。
●1節.アブラハムの時代にあった飢饉とは別に、この地方にまた飢饉があったので、イサクはゲラルにいるペリシテ人の王アビメレクのところへ行った。
「ゲラル」とは、イスラエルの南部にある海岸地域です。
「アビメレク」は、ペリシテ人の王の称号だと思います。
アブラハムの時にも飢饉が襲いましたが、イサクの時にも飢饉が襲います。
ですが、飢饉に対する対応がアブラハムとイサクは違います。
アブラハムの時は主の言葉もなくエジプトに逃げました(12章10節から20節)が、イサクも父親が受けたのと同じ飢饉に見舞われています。
アブラハムは主に助けを求めないで、自分の思いで妻サラを妹と偽って(12章13節)エジプトに逃れました。
それは主の試練であったのですが、アブラハムは主に祈り求めなかったのです。
主はイサクに対しては「あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあんたを祝福し、これらの土地をすべて子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。」と約束されます。
イサクはその言葉に従いこの地にとどまりました。
●2節.そのとき、主がイサクに現れて言われた。
「エジプトへ下って行ってはならない。わたしが命じる土地に滞在しなさい。
●3節.あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあなたを祝福し、これらの土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。
●4節.わたしはあなたの子孫を天の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。
●5節.アブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めや命令、掟や教えを守ったからである。」
イサクは、主の声を聴きます。
それは、「エジプトへ下って行ってはならない。わたしが命じる土地に滞在しなさい。」です。
そうすれば、「この土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。」です。
それは、子孫繁栄・カナンの地授与の約束と「地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。」です。
この「地上の国民は・・・祝福を得る。」は、アブラハムに対する祝福が、いずれ人類全体に対する祝福となるということでしょう。
3節の主の命令である「あなたがこの土地に寄留するならば」のこの土地は、ゲラルのことでしょう。ゲラルは、ガザの南東にある町(1節)
エジプトに行くのではなく、また東方の国に旅することもなく、イサクは約束された地にとどまりました。(6節)
●6節.そこで、イサクはゲラルに住んだ。
「ゲラル」はガザの南東にある町です。(1節)
1節に「イサクはゲラルにいるペリシテ人の王アビメレクのところ」とありますが、ペリシテ人はパレスティナ南西部に住んでいた民族で、もともとはイスラエル民族と同様、先住民カナン人を侵略してきた民族です。
●7節.その土地の人たちがイサクの妻のことを尋ねたとき、彼は、自分の妻だと言うのを恐れて、「わたしの妹です」と答えた。リベカが美しかったので、土地の者たちがリベカのゆえに自分を殺すのではないかと思ったからである。
嘘をつく動機もアブラハムの時と同じです。
●8節.イサクは長く滞在していたが、あるとき、ペリシテ人の王アビメレクが窓から下を眺めると、イサクが妻のリベカと戯れていた。
嘘がばれた理由は、12章(エジプト滞在)では「恐ろしい病気」がファラオの宮廷に広がったから、20章では王アビメレクの夢の中で神が警告したから、そして今回はイサクとリベカが戯れていたのを目撃したからです。
●9節.アビメレクは早速イサクを呼びつけて言った。「あの女は、本当はあなたの妻ではないか。それなのになぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。」「彼女のゆえにわたしは死ぬことになるかもしれないと思ったからです」とイサクは答えると、
●10節.アビメレクは言った。「あなたは何ということをしたのだ。民のだれかがあなたの妻と寝たら、あなたは我々を罪に陥れるところであった。」
9節を読むと、イサクは、アブラハムがエジプトで犯した間違いとまったく同じ間違いをこのペリシテの地で犯しています。
妻リベカを妹といい、それは「彼女のゆえにわたしは死ぬことになるかもしれないと思ったからです」と弁解しています。
●11節.アビメレクはすべての民に命令を下した。「この人、またはその妻に危害を加える者は、必ず死刑に処せられる。」
イサクはペリシテの地で、自分の妻を妹と偽るうそをついたのですが、アビメレクは怒ってイサクを殺してもおかしくないのですが、「この人、またはその妻に危害を加える者は、必ず死刑に処せられる。」とすべての民に命令します。
殺されてもよいのに逆に守られた、のです。
これを主の約束の成就、恵みととらえるべきでしょう。
それは、イサクは、「あなたがこの土地に寄留するならば、」(3節)という主の命令に聞きしたがったからでしょう。
●12節.イサクがその土地に穀物の種を蒔くと、その年のうちに百倍もの収穫があった。イサクが主の祝福を受けて、
●13節.豊かになり、ますます富み栄えて、
●14節.多くの羊や牛の群れ、それに多くの召し使いを持つようになると、ペリシテ人はイサクをねたむようになった。
12節からは、イサクの祝福ですが、イサクは遊牧民ですが、「その土地に穀物の種を蒔く」農耕もしています。
飢饉によって寄留の民としてやって来たのに、ペリシテ人よりも豊かになってしまったので「ペリシテ人はイサクをねたむようになった。」のです。
ゲラルの地に種を蒔いたところ、百倍の収穫を得たのです。
さらに羊や牛の群れが増えて、多くの「召し使い」を所有するようになりました。
それだけに、その祝福に対する反動ともいうべき妬みや嫌がらせといったものが起こることは当然です。
« 長子の特権(創世記25章) | トップページ | 井戸をめぐる争い(創世記26章) »
「創世記を読む」カテゴリの記事
- 赦しの再確認・ヨセフの死(創世記50章)(2024.08.01)
- ヤコブの埋葬(創世記50章)(2024.08.01)
- ヤコブの死(創世記49章)(2024.08.01)
- ヤコブの祝福(創世記49章)(2024.07.24)
- ヤコブ、ヨセフの子らを祝福する(創世記48章)(2024.07.21)
コメント