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2024年1月18日 (木)

サラの死と埋葬(創世記23章)

聖書の箇所は、23章1節から20節です。
新約聖書につながる重要なアブラハムの物語は、この23章で終わります。

 

この辺はあくまでも伝承を取りまとめたものであることを断っておきます。
23章の「サラの死と埋葬」は、22章でアブラハムがイサクを全焼のいけにえとしてささげるように神に命じられた出来事から、約20年が経過した時代のことだと思います。

 

当時は一族が代々使用する墓に埋葬室を設け、そこに遺体とともに、食べ物や陶器や指輪などの小装身具や、武器や道具や、他の愛用品などを納めたようです。

 

 

サラはアブラハムの異母兄妹ですから、生まれてからずっとアブラハムと共に生きてきたのです。
90歳でイサクが与えられましたが、それからでも、37年生きたことになります。

 

●1節.サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。

 

サラの生涯は百二十七年、アブラハムはこのとき、137歳でした。
このように現在と比べて長命なのは、やはり環境のせいでしょうか、

 

サラは死にました。死んだサラの遺体をどうするかという問題が起こります。
そのうえで問題になるのは、葬る場所の問題です。

 

アブラハムは遊牧民ですから、137歳になっても土地一つ所有していなかったのです。
それらしいのは、21章後半ではゲラルの王アビメレクと平和条約を結ぶ場面で、アブラハムは自分たちが掘った井戸の権利だけ認めるように主張しただけです。

 

彼は今、故郷のウルから旅立って約束の地カナンに住んでいます。それも天幕を張って生活をする寄留者としてです。
アブラハムは15章で神と契約を結んだ時に、やがて子孫たちが他国で400年の間奴隷となり(15章16節)、その後、このカナンの地に戻って来るという啓示を受けていました。

 

アブラハムはこのあと35年間も生き、その間にもう一人の妻ケトラとの間に6人の息子をもうけています。

 

●2節.サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。

 

アブラハムはベエル・シェバに住んでいましたが(19節)、サラはヘブロンで死んだのです。
ヘブロンは13章8節でアブラハムが祭壇を築いた地で、エルサレムの南南西30キロの地点に位置します。

 

●3節.アブラハムは遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人々に頼んだ。
●4節.「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」

 

主はアブラハムに、カナンの地は「見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。」(13章15節)という所有の約束をされています。

 

約束だけでまだこの時は、何一つ所有していませんので、それで彼は、「あなたがたのところに一時滞在する寄留者」と告白しています。
キリスト者も同じです。この地上世界では寄留者であり旅人です。約束の本国は天国にあります。

 

と言っても、死んだからだの処置はどうでもいいと聖書は書いていません。

 

●5節.ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、
●6節.御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」

 

ヘトの人々は、アブラハムを「神に選ばれた方」と言っていますから、ヘト人の間でも、アブラハムは敬われ、恐れられていたのでしょう。
へト人は、カナンの土着民族の一つで、ユダ王国の指導者たちがバビロン捕囚から戻っていた紀元前538年の記述に、周辺の異民族の名前として出てきます。

 

●7節.アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、
●8節.頼んだ。
「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、
●9節.あの方の畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」

 

ヘトの人々は、「最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。」とアブラハムに言っているのにアブラハムは、わざわざ丁寧に頼んでいます。

 

それは、ヘト人の言葉はあくまでも商いの上での儀礼であって、相手が自ら購入を申し出るための前置きであるということでしょう。
アブラハムは、作物を作るための畑地を所有するつもりはないし、自分たちの居場所として土地そのものを所有するつもりもありません。

 

最後まで寄留者、居留民として生きる覚悟でいるわけだから。彼が求めたのは、あくまでも埋葬場所です。
それで彼は、サラを埋葬するのにふさわしいほら穴を見つけたので、私有の墓地としてその畑地を譲ってくださいと願い出ているのです。

 

●10節.エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。ヘトの人エフロンは、町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。

 

アブラハムは、「ヘトの人エフロン」の「畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたい」と願っています。
エフロンは、「町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々」の前でアブラハムに返答します。

 

ですから、交渉は町の門のところで行なわれていたのでしょう。
行政や大きな商取引が執り行われる場所です。

 

なお、当時、古代世界にあって土地の価値は高く、同族の者に売ることはあっても、そうではないよそ者たちに売ることはめったになかったそうです。

 

ですからこの取引も難航するはずですが、交渉の最初にヘトの人々は意外にも「御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。」(6節)と言っています。

 

ここで問題は異教徒であるヘトの人々が、アブラハムを「神に選ばれた方」とまで呼んでいることです。
それは、」アブラハムはかつて、王アビメレクから「神は、あなたが何をなさってもあなたと共におられる。」(21章22節)と言われ、アビメレクのほうからアブラハムに近づいて、平和条約まで結んでいます。

 

そのことからアブラハムのうわさは、王と渡り合うアブラハム、アブラハムの神は恐ろしい、アブラハムはただ者ではない、といううわさがカナンの地に広まっていたのでしょう。

 

アブラハムは当時の人々との間では、リーダー的存在であったことがわかります。
それに彼は日ごろから、何かにつけ天地を造られたという神に祈り、神を礼拝し、そして実際神の祝福は確かに彼に注がれているとみられていたのでしょう。

 

そこでヘトの人々は、王とも交わりのあるそのような彼の申し入れを拒むことは得策ではないと思い、「わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。」(23章6節)といったのではないでしょうか。

 

ということで、アブラハムは、土地の人たちが一目も二目も置く、著名人となっていたのでしょう。

 

●11節.「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」
●12節.アブラハムは国の民の前で挨拶をし、
●13節.国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。

 

「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」

 

「あの畑は差し上げます。」と言っていますが、額面どおりではないでしょう。実際には相当高額な400シュケルでアブラハムは買っています。
アブラハムに強く購入したいと申し出させるための駆け引きかもしれません。

 

●14節.エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、
●15節.御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」
●16節.アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。

 

墓の代金「銀四百シェケル」は、高額だと思いますが、例えば、当時は、村全体の売却で百~千シェケルであったとも言われています。
それにしても、エフロンはすごい高額な値を吹っかけてきたものですが、アブラハムがこの申し出を聞き入れたのどうしてもこの土地を手に入れたかったのだと思います。

 

アブラハムが四百シェケルという高額を支払ってもこの畑地を私有の墓地としようとした理由は、二つ考えられます。
一つは、サラにふさわしい場所、アブラハムにとってサラは、王女という名(サラの名前の意味は王女)にふさわしい女性であったのでしょう。

 

もう一つは、。マクペラのほら穴が最上の墓地だと思ったのでしょう。
すなわち、この地は約束の地カナンであったからでしょう。

 

この時から約600年後に子孫たちはこの地を所有するようになります。
アブラハムは175歳の時に亡くなり、サラと同じマクペラのほら穴に葬られています。

 

このときイサクが75歳、ヤコブが15歳の時です。
この墓には、イサクとリベカも葬られ、ヤコブと妻レアも葬られています。(49章29~32節 50章13節)。

 

このように親子三代にわたって、この墓は用いられることになります。
なお、ヤコブの妻レアからユダが生まれ、イエス様はユダの子孫としてやがて誕生することになります。

 

なお、参考に、墓の代金が四百シェケルとありますが、別の解説では、当時の相場で四シュケルではと書かれています。
どちらにしても、相当高額であったのは確かです。

 

ひょとしたら、アブラハムは単純に値段の交渉に失敗したのかもしれません。

 

●17節.こうして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、
●18節.町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。
●19節.その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマムレの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。
●20節.その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。

 

土地の値段は、17節に「マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、」と書いてあります。植わっている木の数も対象だということです。

 

それにしても、最初、ヘトの人々はアブラハムにこの土地を「差し上げます」
と言っていたのをアブラハムは四00シュケルという相当な高額で買い取りました。

 

アブラハムのこの土地の購入に対する無償でなく高額を払ってでも買い取るという強いこだわりが見受けられます。
それは、アブラハムが神の約束を信じる信仰の証として墓地を取得したと考えられないでしょうか。

 

それは、神がこのカナンの地を子孫に与えると約束されたので、この墓地を彼らのために準備しておいたと考えられないでしょうか。

 

ですから、この墓はサラだけの墓というよりもこの地は約束の地であり、子孫が代々葬られることを考え、サラの死を契機に、神の約束への信仰の証となるべく、この墓地を取得する、それも、代金は払い、それも高額であることにこだわったのでしょう。

 

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