ゲザル滞在(創世記20章)
聖書の箇所は、20章1節から18節です。
●1節.アブラハムは、そこからネゲブ地方へ移り、カデシュとシュルの間に住んだ。ゲラルに滞在していたとき、
「そこから」というのは「ヘブロン」(13章18節)を指し、アブラハムはそこで天幕を張って祭壇を築いて住んでいましたが、「ネゲブ地方」ですから、さらに南に行き、地中海寄りの「カデシュとシュルの間に住んだ。」のです。
●2節.アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは使いをやってサラを召し入れた。
アブラハムか、妻サラをエジプトでは妹ですと言って保護を求め主に対し間違いを犯しましたが、ここでもまたアブラハムは間違いを犯します。
今度は「ゲラル」でも、エジプトの時と同じように妻サラを妹だと言っているのです。
それで、その噂を聞いた「ゲラルの王アビメレク」から、早速、「サラを召し入れ」のお呼びがかかります。
エジプトの時と全く同じ間違いを犯しています。アブラハムの真意を測りかねます。
●3節.その夜、夢の中でアビメレクに神が現れて言われた。
「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は夫のある身だ。」
●4節.アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかったので、「主よ、あなたは正しい者でも殺されるのですか。
●5節.彼女が妹だと言ったのは彼ではありませんか。また彼女自身も、『あの人はわたしの兄です』と言いました。わたしは、全くやましい考えも不正な手段でもなくこの事をしたのです」と言った。
●6節.神は夢の中でアビメレクに言われた。
「わたしも、あなたが全くやましい考えでなしにこの事をしたことは知っている。だからわたしも、あなたがわたしに対して罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。
3節で、神は「夢の中でアビメレクに」直接、「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は夫のある身だ。」と強く警告します。
解説では、これはサラからイサクが生まれる時が近づいているからではないかとされていました。
アブラハム以外の子種がサラの胎に入ることによって、アブラハムの子孫に問題が起こる、つまりそれは、イスラエルの民による神の人類救済計画が台無しになるということです。
ということは、イエス・キリスト誕生にもかかわってくるということです。
アビメレクはまだサラに近づいていなかったのですが、神の「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。」という警告に、アブメレクは自分には全くやましいところがなかったので、神に「正しい者でも殺されるのですか。」と抗議します。それに対して神は、「あなたがわたしに対して罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。」と答えます。
●7節.直ちに、あの人の妻を返しなさい。彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。しかし、もし返さなければ、あなたもあなたの家来も皆、必ず死ぬことを覚悟せねばならない。」
神はアブラハムを、「彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。」と言っています。
アブラハムは預言者であり執り成しをする者としています。
この預言者ですが、解説では、アブラハムの場合、モーセのような意味での預言者ということではなく、神によって召し出された者として生きている者という意味での「預言者」と理解するのが自然だとしています。
このように神は、アビメレクがサラに触れることを一切許さないという強い意志をお持ちです。つまり、神はご自身のご計画(人類救済計画)のためにサラをアビメレクから完全に守られたということです。
サラの件は、当時、アブラハムのような漂泊者にとっては、自分の身を守るための当然の処置であったのかもしれません。
二度目の失敗ですが、神はアブラハムを裁きのではなく、また、一言も責めていません。
反対に、神は彼らが神の召命を全うできるように、二人を、特にサラをこの世の権力者から完全に守って下さったということです。
またそれだけでなく、14節から16節を読むと、アビメレクとの関係も良い方に導かれて、アブラハムが自分の好きな場所に安全に住めるようにされています。
これも、アブラハムとサラから約束の子イサクが生まれるまで、アブラハムとサラの夫婦にとっては多くの試練を乗り越えなければならなかったのでしょう。
そしてついに全能の神によってその約束が果たされるときが来ました。
それは、次章の21章の「イサク」(私は笑う)の誕生です。
●8節.次の朝早く、アビメレクは家来たちを残らず呼び集め、一切の出来事を語り聞かせたので、一同は非常に恐れた。
●9節.アビメレクはそれから、アブラハムを呼んで言った。
「あなたは我々に何ということをしたのか。わたしがあなたにどんな罪を犯したというので、あなたはわたしとわたしの王国に大それた罪を犯させようとしたのか。あなたは、してはならぬことをわたしにしたのだ。」
●10節.アビメレクは更に、アブラハムに言った。
「どういうつもりで、こんなことをしたのか。」
アビメレクはアブラハムに対し、叱責します。
●11節.アブラハムは答えた。
「この土地には、神を畏れることが全くないので、わたしは妻のゆえに殺されると思ったのです。
当時、漂泊者にとってこれは生きていくための真実の思いというか当時の文化であったのでしょう。
●12節.事実、彼女は、わたしの妹でもあるのです。わたしの父の娘ですが、母の娘ではないのです。それで、わたしの妻となったのです。
●13節。かつて、神がわたしを父の家から離して、さすらいの旅に出されたとき、わたしは妻に、『わたしに尽くすと思って、どこへ行っても、わたしのことを、この人は兄ですと言ってくれないか』と頼んだのです。」
アブラハムが、なぜ、このような主に対し過ちを二度繰り返したのかが書かれています。
サラとアブラハムは異母兄弟であったのです。
それで、「さすらいの旅に出されたとき、わたしは妻に、『わたしに尽くすと思って、どこへ行っても、わたしのことを、この人は兄ですと言ってくれないか』と頼んだのです。」と言っています。
ですから、当時はそういうことは、漂泊者が生きていくためにはが当たり前のことであったのです。
●14節.アビメレクは羊、牛、男女の奴隷などを取ってアブラハムに与え、また、妻サラを返して、
●15節.言った。「この辺りはすべてわたしの領土です。好きな所にお住まいください。」
●16節.また、サラに言った。「わたしは、銀一千シェケルをあなたの兄上に贈りました。それは、あなたとの間のすべての出来事の疑惑を晴らす証拠です。これであなたの名誉は取り戻されるでしょう。」
神の脅迫と、事情を知ったアビメレクは、アブラハムにサラを返して「羊、牛、男女の奴隷などを」与えたのです。
その上に、「好きな所にお住まいください。」と付け加え、サラに対し、「あなたとの間のすべての出来事の疑惑を晴らす証拠」として、「銀一千シェケル」をアブラハムに贈ったと言っているのです。
アビメレクは、アブラハムやサラに手を出すどころか、神を恐れて彼に多くの財産を与えたのです。
●17節.アブラハムが神に祈ると、神はアビメレクとその妻、および侍女たちをいやされたので、再び子供を産むことができるようになった。
●18節.主がアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの宮廷のすべての女たちの胎を堅く閉ざしておられたからである。
すごいですね。神は、アビメレクを脅迫し、さらに「ブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの宮廷のすべての女たちの胎を堅く閉ざして」子供を産めないようにされていたのです。
それで、いま、それをいやされ再び子供が産めるようになったのです。
神は、アブラハムの子孫を祝福すると言われ、ご自分の全人類救済計画のゆえに守っておられたのです。
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