前置き(ヨエル書を読む)
「ヨエル書」は、わずか4章からなる小預言書で、記述預言書です。
未曾有の大災害をもたらすイナゴの大軍の来襲を「主の日」、つまり主がご計画があってなされた出来事として語られています。
この主の日がヨエル書の大きな主題となります。
イスラエルに災難として降りかかる出来事は、神のさばきであり、同時に、神の救い(回復)の恩寵でもあるのです。
つぎに、この預言書が書かれた時代ですが、預言者ヨエルのプロフィールについての情報は1章1節の「ペトエルの子ヨエル」のみです。
そして、自分が語る内容は、主から与えられたものであると述べています。
時代背景ですが、ヨエルは南王国ユダの預言者であって、時代的にはオバデアに続く預言者です。
オバレヤ書もヨエル書と同じで、主題は「主の日」です。
書かれた年代はよくわからないそうですが、ただ、年代が想定できる材料として、アモス書の中に2箇所だけ出てくるヨエルの預言の引用と思われる個所がありますので、そこからアモス書以前と推定されます。
(1)ヨエル書3章16節が、アモス書1章2節に。
(2)ヨエル書3章18節が、アモス書9章13節に。
アモスは北イスラエルにおいて、B.C.790年頃に預言活動をしましたから、おそらくヨエルはエリヤとその後継者エリシャの時代に、エルサレム(シオン)に対して預言(記述預言者です)したのではないかと考えられています。
B.C.790年頃は、北イスラエルではホセアなど、南ユダではイザヤなどと同時期に活躍しています。
ですから、推測ですが、ヨエルは、預言者エリヤとその後継者エリシャの時代に預言したのではないか、と言われています。
紀元前840年から30年頃です。
ヨエルは、南ユダ王国かイスラエル王国のどちらの人間かですが、おそらく南ユダの預言者だろうと言われています。
それは、シオンについて、あるいは、エルサレムについてのことを預言しているからです。
ヨエルは、前代未聞の、いなごによる災害を預言します。
この大災害によってもたらされた穀物の損失と、人々の悲しみを見ながら、主から、終わりの日に襲う恐ろしい日、「主の日」の幻を見ます。
ヨエル書は、このいなごの来襲を比喩として、これからやってくる大変な時代を預言し、その時代を将来に控えて、神の前で悔い改めることを警告します。
ヨエル書に出て来るいなごの大軍の来襲ですが、古代中近東はいなごの大軍の来襲によって、しばしば大きな災害に見舞われている地域ですから、字義的に解釈するのが正しいのでしょう。
想像を絶するいなごの大軍は、砂漠と草原地帯の乾燥した平原で、一定の熱さと湿気があり、ある条件を満たすと、突然爆発的にその数を増し群れとなって周囲に広がっていくそうです。
そして何千万、何億といういなごが雲のように来襲することで大災害をもたらします。
その状況が、神の警告的な預言としてとらえられています。
警告的な預言とは、1章6節、「一つの民がわたしの国に攻め上って来た。強大で数知れない民が。その歯は雄獅子の歯、牙は雌獅子の牙。」です。
「一つの民」と「強大で数知れない民」は同義で、いずれも集合名詞で単数だと言うことです。
つまり、イスラエルに外国(異邦人)の侵略者たちにより破滅的な神のさばきがもたらされるという警告です。
いなごの大軍の来襲は何千万、何億匹という数で、いなごは植物性のものをすべて食い尽くすため、食糧の飢饉を招きます。
当時も今もいなごの来襲は、中近東の人々にとっては最も恐れる災害です。
いなごによる災害が未曾有のものであることが、1章4節で、「かみ食らういなごの残したものを/移住するいなごが食らい/移住するいなごの残したものを/若いいなごが食らい/若いいなごの残したものを/食い荒らすいなごが食らった。」と表現されています。
そのいなごの大群の被害は、字義的に解釈するのですが、ヨエル書では同時に「諸国の民」の比喩ともなっています。
歴史的な大災害の体験を踏まえて、やがて北の方からアッシリヤ、バビロンといった巨大な強敵がイスラエル国に攻め込んで来て、そこを蹂躙するという預言的な意味もあるのではと言うことです。
もちろん、それも主の裁きとしてとらえるのです。
ヨエル書は、新約聖書の使徒言行録に多く引用されていますので参考に記しておきます。・・2:16 2:17 2:18 2:19 2:20 2:21 などです。
15節ではそのさばきは「その日」「主の日」と呼ばれ、このことを後の世代に伝えよと命じられています。
最後に「主の日」ですが、通常、主の日は主が来られてこの世界を完成される日で、ヨハネの黙示録に出てくる7年の艱難時代を指します。
ヨエル書は、その艱難時代におけるイスラエルの預言としてとらえたいと思います。
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