主の告発(ミカ書を読む)6章
聖書箇所は、6章1節から16節です。
●1節.聞け、主の言われることを。立って、告発せよ、山々の前で。峰々にお前の声を聞かせよ。
「聞け」という主の呼びかけで始まる箇所は、三度目です。
一度目は、1章2節で2度目は3章1節です。
内容は、それぞれが主の裁きの次に回復を預言しています。
ここ6章は、裁判所での裁判の様子と同じです。
原告は「主の告発」ですから主なる神、その主の告発を主張、すなわち訴状を読み上げるのが代理人・弁護士で、それはミカの役目です。
「山々の前で。峰々にお前の声を聞かせよ。」ですから、山々、峰々が裁判官・証人で、そして被告は「答えよ」と命令されているイスラエルです。
●2節.聞け、山々よ、主の告発を。とこしえの地の基よ。主は御自分の民を告発し/イスラエルと争われる。
「聞け、山々よ、主の告発を」ですから、山々(天地)を証人にしています。
天地を証人に立てておられるのは、イスラエルが行ったことは人の目に隠せても、天地のように誰の目にも隠すことはできないと言うことでしょう。
●3節.「わが民よ。わたしはお前に何をしたというのか。何をもってお前を疲れさせたのか。わたしに答えよ。
「わが民よ。わたしはお前に何をしたというのか。何をもってお前を疲れさせたのか」と主はイスラエルに訴えられています。
この言葉の内容からすると、イスラエルの民が、主は何もして下さらない、もう疲れたと不平を言っている姿が想像できます。
おそらく、度重なるアッシリアの攻撃の前になすすべもなく困っているので願っているのに、主がその脅威を取り除いてくださらないので、不信、不満を漏らしていたのではないでしょうか。
●4節.わたしはお前をエジプトの国から導き上り/奴隷の家から贖った。また、モーセとアロンとミリアムを/お前の前に遣わした。
3節でのイスラエルの不満に対して主は、モーセらを遣わし、イスラエルの民をエジプトの奴隷の苦しみから解放したことを語ります(出エジプト記12章51節、20章2節、申命記7章8節、詩編77編21節など)。
●5節.わが民よ、思い起こすがよい。モアブの王バラクが何をたくらみ/ベオルの子バラムがそれに何と答えたかを。シティムからギルガルまでのことを思い起こし/主の恵みの御業をわきまえるがよい。」
神がイスラエルに関わられたことはすべて、良いことばかりでした。
「思い起こすがよい。・・・バラムがそれに何と答えたか」ですが、バラクがイスラエルの民に呪いをかけようとしたこと(民数記22章1節以下)、そして、預言者バラムがそれを祝福に変えたこと(同23章7節以下、18節以下、24章3節以下)を言っているのでしょう。
モアブ人の王バラクがイスラエルを呪うためバラムを雇ったのですが、バラムの呪いを主は祝福に変えてしまわれたのです。
「シティムからギルガル」とありますが、シティムは民がヨルダン川を渡る直前に宿営した所です。(民数記25章1節、33章49節、ヨシュア記2章1節など)
そして、ギルガルはヨルダン川を渡った直後に宿営した所です。(ヨシュア記4章19節、5章9節など)。
つまり、ヨルダン川を堰きとめて、無事にそこを渡らせてくださった神の御業を思い起こせよと言っているのです。
このように、どこをどう見ても、主がイスラエルにつまずきを与えるようなことは一切なかったのですが、それにも関わらずイスラエルは離れていったのです。
●6節.何をもって、わたしは主の御前に出で/いと高き神にぬかずくべきか。焼き尽くす献げ物として/当歳の子牛をもって御前に出るべきか。
●7節.主は喜ばれるだろうか/幾千の雄羊、幾万の油の流れを。わが咎を償うために長子を/自分の罪のために胎の実をささげるべきか。
6節と7節は被告イスラエルの反問で、一つは、どのような「焼き尽くす献げ物」をささげればよいのかと問いかけます。
「当歳の子牛をもって御前に出るべきか。」(6節)と問うた後、幾千の雄羊、幾万の油の流れ(7節)と量を増やし、「わが咎を償うために長子を/自分の罪のために胎の実をささげるべきか。」と問います。
北イスラエルの滅亡直前、子どもを火で焼いて犠牲にすることが流行りました(列王記下16章3節、17章17節)。
それは、主が最も忌み嫌われるモレクという異教の神に対して行う儀式でした(レビ記18章21節、20章2~5節、エレミヤ書7章31節など)。
主の忌み嫌われる偶像礼拝、それも、子どもを火で焼いて犠牲にするというようなことで、どうして国難を去らせることなどできません。
当時のイスラエルでは、危機が近づけば近づくほど、これら犠牲の生贄を熱心に捧げたそうです。
●8節.人よ、何が善であり/主が何をお前に求めておられるかは/お前に告げられている。正義を行い、慈しみを愛し/へりくだって神と共に歩むこと、これである。
7節のイスラエルの訴えに対して、の主の言葉です。
主は、「何が善であり/主が何をお前に求めておられるかは/お前に告げられている。」と言っています。
「正義を行い、慈しみを愛し/へりくだって神と共に歩むこと」です。
「正義」とは、公義、公正、裁きのことで、「慈しみ」とは、慈しみ、善、誠実のことです。
つまり、主の求めは、生贄を捧げることではなく、主の言葉に聴き従って人々に謙虚に仕えることなのです。
●9節.主の御声は都に向かって呼ばわる。御名を畏れ敬うことこそ賢明である。聞け、ユダの部族とその集会よ。
●10節.まだ、わたしは忍ばねばならないのか/神に逆らう者の家、不正に蓄えた富/呪われた、容量の足りない升を。
●11節.わたしは認めえようか/不正な天秤、偽りの重り石の袋を。
●12節.都の金持ちは不法で満ち、住民は偽りを語る。彼らの口には欺く舌がある。
9節からは、主なる神による告発で、「御名を畏れ敬うことこそ賢明」と言われます。
それは、主が求めておられる「正義」と「慈しみ」と「へりくだり」がいかに欠如しているか、「不正」、「不法」、「偽り」に満ちているかが述べられ、それゆえに滅びを刈り取らなければならないと告げられます。
12節に、「彼らの口には欺く舌がある。」とありますから、彼らが行っていたのは「狡賢さ」であったのでしょう。
主の言葉を謙虚に受け止めるさまはどこにもありません。
上手に目方のはかりを変えて、不正に儲けていたのです。
指導者層が悪ければ、被支配者も嘘をつくことに慣れてしまいます。
こうしてみると、イスラエルがエジプトでの奴隷の苦しみから解放されて以来、主は一貫して同じことを民に求めておられます。
それに対してイスラエルの民は、主を畏れず、不正を行い、偽りを語り、異教の神に心迷わされ続けていたわけです。
●13節.わたしも、お前を撃って病気にかからせ/罪のゆえに滅ぼす。
●14節.お前は食べても飽くことなく、空腹が取りつく。持ち物を運び出しても、それを救いえず/救い出しても、わたしはそれを剣に渡す。
●15節.お前は種を蒔いても、刈り入れることなく/オリーブの実を踏んでも/その油を身に塗ることはない。」「新しいぶどうを搾っても/その酒を飲むことはない。
イスラエルを裁く理由を主は続けて語られます。
15節の「お前は種を蒔いても、刈り入れることなく」は、新約聖書でのイエスの言葉と同じですが、意味が違います。
ここで語られていることは、イエスが言っておられるような喜びのことではなく、13節で「わたしも、お前を撃って病気にかからせ/罪のゆえに滅ぼす」と言われているように、神は罪の中にあるイスラエルを告発して、その報いを与える、と言われているのです。
「お前は種を蒔いても、刈り入れることなく」は、汗を流して労苦しても、つまり、オリーブの実を踏んでも、その油を身に塗ることはなく、新しいぶどうを搾っても、その酒を飲むことはないのです。
なぜならば、せっかく汗を流して労苦しても、その実は敵によって奪い取られるからでしょう。
●16節.お前はオムリの定めたこと/アハブの家のすべてのならわしを保ち/そのたくらみに従って歩んだ。そのため、わたしはお前を荒れるにまかせ/都の住民を嘲りの的とした。お前たちはわが民の恥を負わねばならぬ。
「オムリの定めたこと/アハブの家」は、北イスラエルにおいて極悪非道な王でした。
シドン王の娘であるイゼベルを妻に迎え、偶像礼拝をイスラエルに取り入れた王です。
この偶像礼拝や貪欲の罪が、いま、南ユダにもはびこっていますので、南ユダの地も荒れ果てさせると神は宣言されているのでしょう。
ミカ書にしかない特徴と言われているのが、5章1節の「お前(ベツレヘム)の中から、わたしたちのためにイスラエルを治める者が出る。」と、6章8節の「人よ、何が善であり/主が何をお前に求めておられるかは/お前に告げられている。正義を行い、慈しみを愛し/へりくだって神と共に歩むこと、これである。」です。
5章1節は、イスラエルを治める者(救い主)がベツレヘムからですが、イエス・キリストがベツレヘムで生まれました。
6章8節は、主が再三再四、神の民に好意に示したもかかわらず、それに答えることのできなかった民たちは、その償いとしてどのようにすれば良いのかという民の問いに対して、主ご自身が答えられた言葉です。
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