民の腐敗(ミカ書を読む) 7章
聖書箇所は、7章1節から7節です。
1節から7節は、預言者ミカの哀歌です。・
エルサレムの絶望的な状況をミカは、1節から3節で「悲しいかな」と言う言葉と共に語ります。
そして、7節で「わたしは主を仰ぎ/わが救いの神を待つ。」と希望で終わるのです。
●1節.悲しいかな/わたしは夏の果物を集める者のように/ぶどうの残りを摘む者のようになった。もはや、食べられるぶどうの実はなく/わたしの好む初なりのいちじくもない。
●2節.主の慈しみに生きる者はこの国から滅び/人々の中に正しい者はいなくなった。皆、ひそかに人の命をねらい/互いに網で捕らえようとする。
ミカは、「主の慈しみに生きる者はこの国から滅び/人々の中に正しい者はいなくなった。」と嘆いています。
そのことを「夏の果物を集める者」、すなわち、収穫が終わった後のぶどうの実がない畑の姿で形容しています。
ただし、ここは収穫と言うよりも、初なりの実は、果樹園で働く者にとってはすべての希望の象徴ですが、それがすべて奪われてしまって無に帰するということでしょう。
つまり、ぶどうの実を「主の慈しみに生きる者」「正しい者」に喩えて、イスラエルにはそれらの人々がいなくなったこと、すなわち、ぶどうの実が無くなって、「ひそかに人の命をねらい/互いに網で捕らえようとする。」人々ばかりになってしまったことを嘆いているのでしょう。
●3節.彼らの手は悪事にたけ/役人も裁判官も報酬を目当てとし/名士も私欲をもって語る。しかも、彼らはそれを包み隠す。
●4節.彼らの中の最善の者も茨のようであり/正しい者も茨の垣に劣る。お前の見張りの者が告げる日/お前の刑罰の日が来た。今や、彼らに大混乱が起こる。
2節から4節は、社会における指導者層の不正です。
裁判官とか名士の中の最善の者でも、「茨のようであり/正しい者も茨の垣に劣る。」と言っています。(3節・4節)
政治、裁判の有力な指導者たちは、自分の利益を得るために平然と賄賂を受け取り、公義と正義を捨ててしまっていたのです。
これは民の指導者たちの中で、「最善の者」(善人)また「正しい者」と見える人々も、「茨の垣に劣る」ですから、助けを求めても、(自分の利益のみ考えているから)反対に傷つけられてしまうということを意味しているのでしょう。
それに対して、「お前の刑罰の日が来た。今や、彼らに大混乱が起こる。」と、二人称で神のさばきが宣告されます。
なお、「お前の見張りの者」と言うのは、神の裁きとして敵の攻撃が町に迫って来ることを預言者が「見張る」と言うことでしょう。
●5節.隣人を信じてはならない。親しい者にも信頼するな。お前のふところに安らう女にも/お前の口の扉を守れ。
●6節.息子は父を侮り/娘は母に、嫁はしゅうとめに立ち向かう。人の敵はその家の者だ。
5節と6節は、友人、親子、兄弟、嫁姑といった親しい間柄も冷え切っています。不信がまん延しています。
イスラエルと言う国の末期症状が描かれています。
「隣人を信じてはならない。親しい者にも信頼するな。」ですから、隣人とか親しい者との関係もなくなっていきます。(5節)
最後に、「息子は父を侮り/娘は母に、嫁はしゅうとめに立ち向かう。」(6節)と言われます。
エルサレムは、親しい関係である家族や友人さえも、信頼できなくなってしまっていたのです。
これは住民の間に密告制度を導入したのでしょうね。まさに国の末期症状をあらわしています。
そのような悲しむべき状況をミカは見たのでしょう。
たとえ、自分の生きた時代でなく将来の出来事であっても、神の示す幻の中にそれを見たのでしょう。
主がエルサレムに求めておられるのは「正義を行い、誠実を愛し、へりくだってあなたの神とともに歩むこと」です。その言葉はどこに行ったのでしょうか。
まさに、イエスが終末の徴として語られた言葉「兄弟が兄弟を、父は子を死に追いやり、子は親に反抗して殺すだろう。」(マルコの福音書13章12節)と同じ状況です。
●7節.しかし、わたしは主を仰ぎ/わが救いの神を待つ。わが神は、わたしの願いを聞かれる。
ミカは、「わが救いの神を待つ」と、エルサレムが絶望的な状況にもかかわらず、主を仰ぎ、救いの神を待ち望みます。
「主を仰ぎ」は、主がされることを見張る、監視するという意味だそうです。
「待つ」は、この動詞は主を信頼しながら静かに待ち望むことを意味するそうです。
将来なされる神の善を信じて今日を生きるのです。
主に対する「待ち(望み)」が「わが神は、わたしの願いを聞かれる。」と、確信に満ちた告白となっています。
ミカは「わたしは」と強調し、「主を仰ぎ」は、原文から主の救いを見張ると、預言者としての働きと言う意味に解釈されています。
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