父の諭し⑹(5章)
聖書の箇所は、5章1節から23節です。
●1節.わが子よ、わたしの知恵に耳を傾け/わたしの英知に耳を向けよ。
●2節.そうすれば、あなたは唇に慎みを守り/知識を保つことができる。
●3節.よその女の唇は蜜を滴らせ/その口は油よりも滑らかだ。
「よその女」、つまりイスラエル人ではない他国の女であり、神の知識を持っていない女です。
よその女は初めに口で甘いことを滑らかな言葉で誘います。
男はこの甘い、滑らかな言葉に脆いのです。
この「よその女」は、新改訳は「他国の女」、口語訳は「遊女」となっています。
他に、だらしない女とか異国の女と訳されて、大方、誘惑して姦通する女を示す語として使われています。
この名詞の基になっている動詞には、「押しつぶす」「押し入る」「遠ざける」「迷う、迷わせる」「吐き気を催させる」などの意味があるそうです。
●4節.だがやがて、苦よもぎよりも苦くなり/両刃の剣のように鋭くなる。
●5節.彼女の足は死へ下って行き/一歩一歩と、陰府に達する。
「苦よもぎ」を調べますと、この草には毒性はないが、強い苦みのある成分が含まれているため、聖書ではしばしば苦しみや裁きの比喩として用いられていて、健胃剤、駆虫剤、あるいは防虫剤に用いられます。
「よその女の唇は」、最初は甘く滑らかですが、苦よもぎのように苦く、油よりも滑らかな口は、もろ刃の剣よりも鋭いのです。
●6節.人生の道のりを計ろうともせず/自分の道から外れても、知ることもない。
新改訳は、「その女はいのちの道に心を配らず、その道筋は確かでないが、彼女はそれを知らない。」です。
その「苦よもぎ」のような唇を持つ(吐き気を催させる)他国の女は、自身、神を知らないのですから、自分が歩んでいるところが定かではないことも知りません。
「よその女」をまとめると、何らかの関わりで、押し入って来て、本来のかかわりを遠ざけ、迷わせるだけでなく、やがては「吐き気を催させる」結果を招くというメッセージをもった語彙であると言うことです。
そのような女とかかわる(性的な関係を結ぶ)ことがないように、父は子に警告しているのです。
よって、3節から6節をまとめると、「他国の女」は、きわめて魅力的であり、その誘惑の言葉は甘く、そして心地良いが、一度その誘惑が乗れば破滅の苦しみを味わうことになり、その結末は「よみ」、すなわち、死の道につながっている。
彼女は最初から「いのちの道」(救いの道)に関心がなく、また、知ろうとはしない。
それゆえ、いかなる幻想をも彼女に対して抱いてはならない、となります。
●7節.それゆえ、子らよ、わたしに聞き従え。わたしの口の言葉からそれてはならない。
●8節.あなたの道を彼女から遠ざけよ。その門口に近寄るな。
7節と8節は、父の子に対する勧告命令です。
もし、父の教えに従わず、「わたしの口の言葉からそれ」たなら、破滅という最悪の状態に陥ることになることを下記の言葉で警告しています。
⑴「子らよ、わたしに聞き従え。わたしの口の言葉からそれ」るな。
⑵あなたの道を彼女から遠ざけ、その家の門に近づくな
●9節.あなたの栄えを他人に/長寿を残酷なものに渡してはならない。
新改訳は「そうでないと、あなたの尊厳を他人に渡し、あなたの年を残忍な者に渡すだろう」です。
●10節.よその者があなたの力に飽き足りることを許すな。異邦人の家を/あなたが労した実りで満たしてはならない。
新改訳は、「そうでないと、他国人があなたの富で満たされ、あなたの労苦の実は、見知らぬ者の家に渡るだろう。」です。
「子らよ、わたしに聞き従え。」、それでないと「榮」ですから、自分の尊厳、財産、評判など、これまで長年かけて積み上げてきたものがみな奪い取られてしまう、ということでしょう。
他の人との関係、信頼関係は、長い期間をかけて培われていくものですが、これらをみな失ってしまいます。
●11節.さもなければ後になって/肉も筋も消耗し、あなたは呻き
新改訳は、「そして、あなたの終わりにあんたの肉とからだが滅びるとき、あなたは嘆くだろう。」です。
●12節.言わなければならない。「どうして、わたしの心は諭しを憎み/懲らしめをないがしろにしたのだろうか。
新改訳は、「そのとき、あなたは言おう。「ああ、わたしは訓戒を憎み、わたしの心は叱責を侮った。」です。
わたしの訓戒を聞かない時は、あなたは人生の終わりの日に、訓戒を侮り聞かなかったことを後悔し嘆きだろう、ですか。
●13節.教えてくれる人の声に聞き従わず/導いてくれる人の声に耳を向けなかった。
●14節.会衆の中でも、共同体の中でも/わたしは最悪の者になりそうだ。」
「金銭を愛した者」の最後の言葉が続きます。
「教えてくれる人の声に聞き従わず/導いてくれる人の声に耳を向け」ないで、父の訓戒を聞かなかった結果、「共同体の中でも/わたしは最悪の者」になりそうだと言っています。
この共同体と言うのは、神を信じている者たちの集会に集う会衆の中で最悪の状態だ、と言っているのでしょう。
●15節.あなた自身の井戸から水を汲み/あなた自身の泉から湧く水を飲め。
新改訳は、「あなたの水ためから、水を飲め。豊かな水をあなたの井戸から。」で
す。
「あなた自身の泉」と「あなたの若い時の妻」とは同義だと言うことです。
ここは象徴的表現で、つまり、「あなた自身の妻に対して真実を尽くし、あなたの愛を彼女にのみ注ぎなさい。」と解釈されています。
一心同体になった自分の妻のことで、その妻を大切にして、妻だけを愛するように、父は自分の子に教えているのです。
そして、そこから自分の満たしを得なさい、そしてそれは、「源は溢れ出て」、豊かな水です。
父は、妻を大切にして妻だけを愛するように、自分の子に教えているのです。
なお、聖書では、水は聖霊を現し、水と関係する「井戸」「泉」「水ため」も神から来る尽きることのないいのちの象徴としています。
このような夫婦観は、聖書の結婚についての最も重要な教えで、夫婦関係には、当然、神と人との生きたかかわりがその教えの根源にあります。
●16節.その源は溢れ出て/広場に幾筋もの流れができるであろう。
新改訳は、「あなたの泉を外に散らし、通りを水路にしてよいものか。」です。
●17節.その水をあなただけのものにせよ。あなたのもとにいるよその者に渡すな。
新改訳は、「それを自分だけのものにせよ。あなたのところにいる他国人のものにするな。」です。
●18節.あなたの水の源は祝福されよ。若いときからの妻に喜びを抱け。
新改訳は、「あなたの泉を祝福されたものとし、あなたの若い時の妻と喜び楽しめ。」です。
「あなたの若い時の妻と喜び楽しめ。」、つまり、いつまでも同じ妻、同じ女と喜び楽しめ、ということでしょう。
複数の愛人を持てば、心は満たされてると思うのですが、「あなた自身の泉」は、つまり、若い時の妻との関係の中で、尽きることなく溢れてきます。
●19節.彼女は愛情深い雌鹿、優雅なかもしか。いつまでもその乳房によって満ち足り/常にその愛に酔うがよい。
新改訳は、「愛らしい雌鹿、いとしいかもしかよ。その乳房がいつもあなたを酔わせ、いつも彼女の愛に夢中になれ。」です。
この花嫁だけを愛する花婿となるように、父(御父・神)は自分の息子(御子)に要求しているのでしょう。
15節からここ19節では、神から与えられた祝福のしるしである「あなたの水ため」「あなたの井戸」「あなたの泉」(「あなたの若い時の妻」と同義)を自分だけのものにせよと勧められていて、ここでは「若い時の妻」が「愛情深い雌鹿、優雅なかもしか」にたとえられています。
聖書が教えることが禁欲ではないことがよくわかります。
性の営みを、思う存分楽しみなさい、と勧めているのです。そしてそれは祝福されたものなのです。
●20節.わが子よ/どうしてよその女に酔うことがあろう/異邦の女の胸を抱くことがあろう。
新改訳は、「わが子よ。あなたはどうして他国の女に夢中になり、見知らぬ女の胸を抱くのか。」です。
「よその女」「異邦の女」に夢中になるですが、わたしたちの体と、魂また霊は密接につながっていますので、人格的な深い結びつきがなく、肉体関係だけを結んでも、そこに何ら祝福はないと言うことでしょう。
●21節.人の歩む道は主の御目の前にある。その道を主はすべて計っておられる。
新改訳は、「人の道は主の目の前にあり、主はその道筋のすべてに心を配っておられる。」です。
隠れて「よその女」「異邦の女」に夢中になっても、「主はその道筋のすべてに心を配っておられる。」」のです。
主の前ではすべて明らかにされています。
●22節.主に逆らう者は自分の悪の罠にかかり/自分の罪の綱が彼を捕える。
新改訳は、「悪者は自分の咎に捕えられ、自分の罪のなわにつながれる。」です。●23節.諭しを受け入れることもなく/重なる愚行に狂ったまま、死ぬであろう。
20節からここ23節は、「よその女」「異邦の女」に夢中になってはならないと警告されています。
「よその女」「異邦の女」に夢中になっているときは、自分の意思で自由に自分の欲望を満たしているからいつでも解消できると思っていても、実際は、その欲望の奴隷になっているのです。
自分が止めたいと思っても、夢中になってしまったら、もうその時点では止めることはできないのです。中毒状態です。
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