父の諭し⑴(1章)
聖書の箇所は、1章8節から19節です。
箴言における父の子に対する最初の教育レッスンがここ1章に記されています。
最初のレッスンのポイントは、8節と10節と15節にある「わが子よ」で始まっている箇所です。
●8節.わが子よ、父の諭しに聞き従え。母の教えをおろそかにするな。
父の諭しは「聞き従えで」、母の教えは、「おろそかにするな」、と言う禁止命令です。
いずれにしても「聞き従う」ことが重要なのですが、子供にとってこれが実は難しいのです。
●9節.それらは頭に戴く優雅な冠/首にかける飾りとなる。
1章から9章までの箇所で、「わが子よ」という呼びかけが数多く出てきます。
おそらくソロモンが父として子レハブアムなどに語りかけた言葉だと考えられます。
「父の諭しに聞き従え。母の教えをおろそかにするな」ですから、モーセの律法、「あなたの父と母を敬え。(出エジプト20:12)」を意識した言葉でしょう。
日頃の生活のことは、お母さんの教えを聞き従い、子供の躾、生活の全体的な方針、善悪の価値観などは父が諭します。
子どもは自分の親を選ぶことはできないし、親は子どもを選ぶこともできません。生まれて育つまでは、どんな子どもになるのか、親でさえわかりません。
だから、このような、親子間で選ぶことも予測することもできない関係に、神は、指針を与えてくださっているのでしょう。
もちろん、父には神を畏れて生きるように求めておられます。
その上での、「父の諭し」です。
9節は、そうすることのすばらしさをたたえています。
●10節.わが子よ/ならず者があなたを誘惑しても/くみしてはならない。
「~ならない」という禁止命令です。
最初の教訓は、両親(父と母)からの諭しと教えに対して従順であることでしたが、ここでは、父と母に対する従順を教えると同時に、「ならず者」(複数形)、すなわち、罪人たちには従ってはならないことを教えます。
この「罪人たち」は、19節では「不当な利益を求める者」と言い換えられています。
父の子に対する教育法には「命令」と「約束」だけでなく、その命令が意味する「理由」と「結果」も語られています。
ここ10節では、「くみしてはならない」理由として、「惑わし」があるからとしています。
父は子に、彼らに惑わされないように、その惑わしの手口(つまり、口説きのテクニック)さえも具体的に教えています。
そして彼らの末路を以下のように結論づけているのです。
●11節.彼らはこう言うだろう。「一緒に来い。待ち伏せして、血を流してやろう。罪もない者をだれかれかまわず隠れて待ち
●12節.陰府のように、生きながらひと呑みにし/丸呑みにして、墓穴に沈めてやろう。
●13節.金目の物は何ひとつ見落とさず/奪った物で家をいっぱいにしよう。
●14節.我々と運命を共にせよ。財布もひとつにしようではないか。
」
若い者たちに付き物なのは、仲間(悪友)からの誘いです。
仲間から、悪いことを一緒にしようと誘われたら、それを断るのには勇気が要ります。
しかし、主を畏れることが知識の初めです。
そのときに、父の諭し、母の教えを思い出し従うことが、主の教えであり知恵のある対処と言えるでしょう。
●15節.わが子よ/彼らの道を共に歩いてはならない。その道に足を踏み入れるな。
「~ならない」「踏み入れるな」という禁止命令です。
●16節.彼らの足は悪事に向かって走り/流血をたくらんで急ぐ。
●17節.翼あるものは見ている。網を仕掛けるのは徒労だ。
父は、「わが子よ/彼らの道を共に歩いてはならない。」と子を諭します。
自分の息子を誘っている仲間(悪友)らの言葉は、「流血をたくらんで急ぐ。」言葉でした。
彼らは、自分たちが「網を仕掛け」た罠が人の目からは隠されていると思っていました。
けれども、「翼あるものは見ている。」ので、彼らの悪事に引っかかる者はいない、と言っているのでしょう。
つまり、仲間(悪友)たちのすることは徒労に終わるということを、このように言っているのです。
こうした表現で、仲間(悪友)たちの愚かさを子の心に焼きつけています。
●18節.待ち伏せて流すのは自分の血。隠れて待っても、落とすのは自分の命。
●19節.これが不当な利益を求める者の末路。奪われるのは自分の命だ。
自分が人の血を流そうとしたら、自分の血を流すことになる、自分が行なおうとした悪は、自分自身の上に降りかかる、ということでしょう。
つまり、「墓穴を掘る」「自業自得」は普遍の真理だと言うことでしょう。
箴言22章8節にも「悪を蒔く者は災いを刈り入れる。」とあります。
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