御子は天使にまさる(1章)
聖書の箇所は、ヘブライ人への手紙1章5節から14節です。
●5節.いったい神は、かつて天使のだれに、/「あなたはわたしの子、/わたしは今日、あなたを産んだ」と言われ、更にまた、/「わたしは彼の父となり、/彼はわたしの子となる」と言われたでしょうか。
「あなたはわたしの子、・・」は、イエスは神の子だと宣言する詩編2編からの引用でしょう。
なお、「産んだ」という言葉は、イエスは神によって造られたもののように受け取れますが、成ったので、産まれたのではないのです。
「わたしは彼の父となり、/彼はわたしの子となる」は、サムエル記下7章14節からの引用でしょう。
ダビデの王座から出てくる子がわたしの子であり、またわたしは彼の父である、と言われています。
サムエル記下7章13節に、「わたしは彼の王国の王座をとこしえに堅く据える」の「とこしえの王座」は、人間の国家ではなく神の国を指すのでしょう。
神の子であるイエスのために神が据えられた王国ですから、神の御子イエスは、神の地位と権威と支配をすべて持っている、ということになります。
だから、1章4節の「御子は、天使たちより優れた者」ということなのでしょう。
●6節.更にまた、神はその長子をこの世界に送るとき、/「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」と言われました。
「長子」はイエスのこと。この長子という語句も造られた者を指すように見えますが、旧約聖書では兄ではなく弟なのに、「長子」と呼ばれている人たちもいますので、長子というのは、初めに生まれたという時間的な順番ではなく、父の二倍の分け前を受け継ぐ人であり、他のすべての兄弟にまさっている、という意味だということです。
もちろん、「御子は、見えない神の姿であり、すべてのものが造られる前に生まれた方」(コロサイ書1章15節)でもあるわけです。
神の子イエスは、万物を造られて、万物はイエスによって成り立ち、またイエスはすべての権威の上に存在し、死者の復活においても初穂となられて、すべてにおいて「第一のもの」となられたのです。
このすべてにおいて第一、すべてにまさっておられる存在というのが、長子という語句が意味することなのでしょう。
「長子をこの世界に送る」とありますが、これは、イエス・キリストが再臨されることを意味しているのではないでしょうか。
ですから、その再臨のときに「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」と神は言われているのです。
●7節.また、天使たちに関しては、/「神は、その天使たちを風とし、/御自分に仕える者たちを燃える炎とする」と言われ、
ここでは天使が造られた目的が述べられています。
「神は、その天使たちを風とし、/御自分に仕える者たちを燃える炎とする」ということです。
ここの「風」は、ヘブライ語では息と同じで「霊」を意味するということです。
ですから、神は「天使たちを霊とし」、となるから天使は霊です。
そして、天使はご自分(神)に「仕える者たち」にとありますが、それは、神の目的を遂行するために、神に仕えている存在ということでしょう。
そして1章14節には、「救いを受け継ぐことになっている人々に仕えるために」とありますから、キリストの福音を受け入れて救いにあずかった人たちにも仕えるのです。
●8節.一方、御子に向かっては、こう言われました。「神よ、あなたの玉座は永遠に続き、/また、公正の笏が御国の笏である。
父なる神ご自身の御子に対する呼びかけです。
父なる神が、御子を「神よ」と呼びかけています。ということは、イエスが神であることを、もっとも明瞭に表しています。
「笏」は威儀を正すという意味があるので、神の国は公正の笏が用いられるところなのです。この公正は人間のように自分の都合での公正ではなく絶対の公正です。
●9節.あなたは義を愛し、不法を憎んだ。それゆえ、神よ、あなたの神は、喜びの油を、/あなたの仲間に注ぐよりも多く、あなたに注いだ。」
「あなたは義を愛し、不法を憎んだ。」の「あなた」はイエスのことですから、イエスは「義を愛し、不法を憎んだ」ので、神の右の座におられるのです。祝福されているのです。
「あなたの神は、喜びの油を、/あなたの仲間に注ぐよりも多く、あなたに注いだ。」というのは、イエスが「義を愛し、不法を憎んだ。」ので、死から復活され天に昇られた後、神の右の座に着かれたことを意味しているのでしょう。
「油を・・注いだ」というのは、旧約聖書では、祭司と王、また預言者が受けるものでした。聖別されて大祭司になられたことを指しているのでしょう。
●10節.また、こうも言われています。「主よ、あなたは初めに大地の基を据えた。もろもろの天は、あなたの手の業である。
「言われている」ということは、神が言われているのですから、神はイエスを「主」と呼び、神がイエスを、天地万物を創造した、創造主であると宣言している言葉になります。
●11節.これらのものは、やがて滅びる。だが、あなたはいつまでも生きている。すべてのものは、衣のように古び廃れる。
すべての事象が、万物がやがて滅んでいくことが宣言されています。
第二ペトロ3章10節にも「主の日は盗人のようにやって来ます。その日、天は激しい音をたてながら消えうせ、自然界の諸要素は熱に熔け尽くし、地とそこで造り出されたものは暴かれてしまいます。」とあります。
●12節.あなたが外套のように巻くと、/これらのものは、衣のように変わってしまう。しかし、あなたは変わることなく、/あなたの年は尽きることがない。」
ここの意味は、天地万物が滅ぶのは、イエスが着物を取り替えるように、新しい天地が造られるということでしょう。
万物を一新するということです。まったく新しい秩序が、このいまある天地万物が滅んだ後に用意されているのです。それでも、イエスは、「変わることなく、その年は尽きることがない」のです。
●13節.神は、かつて天使のだれに向かって、/「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまで、/わたしの右に座っていなさい」と言われたことがあるでしょうか。
これは詩篇110篇からの引用ですね。神がキリストに与えられた権威は、天使にも与えられなかったのです。
この「あなたの敵」というのは、悪魔ですから、悪魔はやがて滅ぼされることを語っているのでしょう。
キリストが、やがて悪魔をご自分の足の下に置かれるのです。
「足台とする」というのは、支配下に置くということですからね。
それまで、すなわちキリストの再臨のときには、悪魔の支配を終わらせて神の国を建てるので、それまで「わたしの右に座っていなさい」ということでしょう。
●14節.天使たちは皆、奉仕する霊であって、救いを受け継ぐことになっている人々に仕えるために、遣わされたのではなかったですか。
天使は、神に仕えているだけではなく、「救いを受け継ぐことになっている人々」にも仕えているのです。
この「救いを受け継ぐことになっている人」というのは、キリストの福音を受け入れて救いにあずかった人のことでしょうが、「ことになっている」とありますから、いま救いを受け継ぐと思っている人でも、それは確定ではないのですね。
自分はクリスチャンだと自称している人はたくさんいますが、まだ誰が救いを受け継ぐかは決まっていないのです。
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