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2018年5月 8日 (火)

最高法院で裁判を受ける(1)(マルコ14章)

聖書箇所は、マルコの福音書14章53節から65節です。

共観福音書の並行個所は、マタイの福音書26章57節から68節、ルカの福音書22章54節から55節・63節から71節です。

長いので二回に分けます。(1)では59節までを読みます。

●53節.人々は、イエスを大祭司のところへ連れて行った。祭司長、長老、律法学者たちが皆、集まって来た。
イエスはまず大祭司のところに連れていかれました。

逮捕したのがローマの軍隊であっても、それはユダヤ教当局、大祭司側からの要請によるものですから、当たり前です。

イエスの裁判は宗教裁判ですから、ローマの法廷に死刑を訴えるにしても、まず、ユダヤ最高法院の権限によってイエスをユダヤ律法による裁判にかけ、死に値する犯罪者と断定する必要があるということでしょう。

「祭司長、長老、律法学者たちが皆」は、最高法院を構成する主なメンバーです。

「・・たち」とありますので最高法院の構成メンバーを調べてみると、上記の主なメンバーのほかに、神殿守衛隊長とか貴族祭司とか財政専門家を含めた、八人から一〇人で構成される常任の評議会で、ユダヤの最高権力機関であったということです。

最高法院のメンバーは、神殿祭儀を執り行う、つまり、サドカイ派の貴族たちです。

「長老たち」というのは、大地主の世襲貴族を指し、エルサレムの議会に常時出席していたのではないそうです。

「律法学者たち」は神学と法学に関する専門家ですから、律法の専門家であるファリサイ派の学者が主であったようです。

このような階層の七一人の議員が、大祭司を議長として、議会や最高法廷である最高法院を構成し、ユダヤの宗教や政治や法律の重要問題を協議し、決定し、裁判していたということです。

なお、イエスが逮捕されてまず連れてこられたのは、最高法院全員の公式の議会(法廷)ではなく、大祭司による予備法廷ではないかと言うことです。

なぜならば、イエスが逮捕されたのは夜ですから、そうすると夜間に法廷が開かれることになりますが、正式の法廷は夜間に開くことはできなかったからです。

ヨハネの福音書18章12節から24節では、この予審が、大祭司カイアファのしゅうとであり陰の実力者であったアンナスの扇動で彼の屋敷で行われたと報告しています。

マルコの福音書も予審の法廷ということで、「大祭司のところに」連れて行かれたとしています。

●54節.ペトロは遠く離れてイエスに従い、大祭司の屋敷の中庭まで入って、下役たちと一緒に座って、火にあたっていた。

ペトロはこの中庭でこのあとイエスを三度否認します。(14章66節から)

そしてペトロは、このあとイエスを見捨てて逃げ去ってしまうのですが、やはりイエスがどうなるのかを見届けたくて、見つからないように「遠くから」ついてきたのでしょう。

「大祭司の屋敷の中庭まで入って・・・」ということですから、先ほどまで剣で殺そうとしていた役人たちといっしょに、火に当たっていたのです。

なんと大胆なとは思いますが、人間の行動と言うものは、理解できないことが往々にしてあるものです。

これらのことが書かれているのは、ペトロがイエスを否認する出来事を語るための準備に入ったということでしょう。

ヨハネの福音書18章15節以下では、ペトロが中庭にまで入れたのは大祭司の知合いであった別の弟子の手引によると伝えています。

●55節.祭司長たちと最高法院の全員は、死刑にするためイエスにとって不利な証言を求めたが、得られなかった。

●56節.多くの者がイエスに不利な偽証をしたが、その証言は食い違っていたからである。

祭司長たちは、イエスを死刑にしょうという意図をもってこの裁判を進めています。

「多くの者がイエスに不利な証言」ということは、夜なかにイエスにとって不利になるような証人となる人びとをわざわざ集めたのです。

お金で買収したのだと思います。

「最高法院の全員」となっていますので、議員全員が集まった法廷であるとわざわざ説明されています。

しかし、夜間で予審の法廷ですから本当に議員全員が集まったのでしょうか。

それに、普通であれば、わざわざ全員なんて書く必要はありません。

全員が出席しているとしなければならない理由があったのでしょう。

それは、この予審がこそこそと一部の者が集まって行われたのではなく、イスラエルの正式の代表の面前で、全イスラエルとして行われたものであることを強調する必要があったのだと思います。

福音書著者からみれば、この裁判が最高法院でなされたという事実と、その最高峰院においてイエスが死に定められた事実が、重要なのだと思います。

「イエスにとって不利な証言」というのは、イエスを死刑にする根拠になるような証言のことでしょう。

律法学者らは、神と神殿を汚す言葉を語る教師は死に相当すると定めていたので、彼らはイエスの宣教活動の中にそのような背教を扇動するような言動があったとする証言を求めたのでしょう。

証人は二人以上別の部屋で調べられ、それが日時や場所まで正確に一致するのでなければ証言として採用されなかったそうですが、イエスの場合、「その証言が一致しなかった」のです。

●57節.すると、数人の者が立ち上がって、イエスに不利な偽証をした。

祭司長たちにとって最も許せないのは、神殿に対するイエスの言動でしょう。

各地からの巡礼が大勢集まる過越祭の直前、イエスはエルサレムに入って神殿で暴力を振るい、祭儀に必要な動物を売る者を追い出し、神殿の崩壊を予言しました(次の節参照)。

宗教国家(神権国家)の権威の象徴である神殿を否定する人物を生かしておくことができなかったのでしょう。

●58節.「この男が、『わたしは人間の手で造ったこの神殿を打ち倒し、三日あれば、手で造らない別の神殿を建ててみせる』と言うのを、わたしたちは聞きました。」

●59節.しかし、この場合も、彼らの証言は食い違った。

ここは一般に「イエスの宮清め」と呼ばれていますが、実際はそうではなく、つまり、イエスの行為はたんなる腐敗・堕落した神殿の回復というものではなく、神殿崩壊を予言する象徴行為であったのです。

イエスは弟子たちにははっきりと神殿の破壊を予告しておられます。(13章1節から2節)。

「しかし、この場合も、彼らの証言は食い違っていた」というのは、イエスの神殿での言行が、単なる「宮清め」か「神殿崩壊の預言か」の食い違いがあったと言うことでしょうか。

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