わたしの言葉は決して滅びない
マルコの福音書13章31節
●31節.天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。
これはイエスの言葉ですが、すごい言葉です。宗教の教祖、いや、人間でこのような言葉を語れる人はいるでしょうか。
わたしたち人間にはとても語ることのできない言葉です。
そうでしょう、自分が死んだあと、ましてやこの天地が滅んだ後もいま自分が語っている言葉が残るなどと、精神異常をきたしているならば別ですが、正常な人間ならばとても言えない言葉です。それに、この言葉というのは、イエス・キリストそのものを指すので神の思いがこもった言葉ですから、現実がその言葉通り成るのです。
これはイエスが世の終わりについて語られた説話(マルコ福音書では13章)の最後に出てくる言葉です。
共観福音書すべてに伝えられていますので、イエスが語られた言葉でも特に大切な言葉と言えます。
イエスは、ご自分の言葉の確かさ、必ず言葉通りのことが実現することを保証されているのです。
事実この福音書はイエス死後30年以上経て書かれているので、著者マルコは、生前のイエスの言葉が現に実現していることを体現した上で書いているのですから間違いありません。
イエスは、ご自分の言葉は天地の存在よりも確かなものだと言われているのです。
ご自分は今わたしたちが生きているこの世界も、また、来世というわたしたちの目には見えない世界をも支配するものであると宣言されたのです。
「天地は滅びるが」という動詞は、「過ぎ去る」という意味の動詞の未来形だということですから、言い換えると、「天地は過ぎ去るであろう。しかし、わたしの言葉は決して過ぎ去ることはないであろう」と宣言しておられるということです。
この天地万物は過ぎ去って無くなってしまう時が来るであろう。
しかし、わたしが語った言葉は、この天地が過ぎ去って無くなっても、未来永劫無くなることはなく、必ず実現するであろう、とイエスは言っておられるのです。
天地万物の存在よりも自分の言葉の方が確かであるという宣言ですから、このような言葉を語ることができるのは、天地万物を創造し、支配している万物の創造者である神か、狂人であるとしか言えません。
この言葉はイエスが語られた言葉ですが、神が語られた言葉です。その様に理解しないと、イエスは狂人になってしまいます。
もちろん、神の言葉はイエスが語られたとする福音書に伝えられている言葉だけでなく、イエスの出来事、すなわちイエスの生涯、十字架上の死、三日目の復活全体が、イエスによって神が世界に語りかけられる言葉だと言えます(ヘブライ人への手紙1章1・2節)。
イエスの語る福音はその様な方の言葉ですから、神の言葉であり、天地が過ぎ去っても過ぎ去ることのない永遠の言葉だと言えます。
神はキリストにおいて人類救済の業をご計画されています。
それは、始めにこの天地を創造して救済史の舞台とし、終わりの時にこの天地を過ぎ去らせて別の新しい天地を創造し、その働きを完成されるのです。
これを創造信仰と言います。冒頭のイエスの言葉は、このことを指し示しているのだと思います。
天地万物とは、この世界と宇宙の全体。その天地万物の仕組み全体を解明する営みが科学ということでしょう。
科学は、人間の知識と生活を豊かにして 、いまや、科学万能時代です。
科学が人間にとって最も信頼できるもの、科学は万能という信仰が生まれました。
しかし、科学はあくまでも被造物である人間の天地万物に関する知識でありますので、その天地万物を創造された方にはかないません。科学にも一定の限界があるのは確実です。
その天地万物を支配される方を信じるのがキリスト信仰といえます。
天地万物を支配される方は、天地万物を創造し、維持し支配されています。
キリスト信仰は、その創造者の意志を求める信仰です。
天地万物を創造された神の意志を求めるということは、天地万物を人間が科学的に解明しょうとする営みでもありますから、ある意味、科学もキリスト信仰の営みの一部とも言えます。
そうでしょう、その科学の知識をわたしたちに与えたのは創造者である神なのですから。
科学とキリスト信仰は衝突することはないのです。
よって、アジアではなくキリスト文化圏である欧米で、近代科学が発達したのは当然のことだと思います。
イエスは、「天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。」と宣言されました。それは、神の言葉がこの天地万物、人間の科学の営みをも支配していることを宣言されているのでしょう。
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